どうしてくれるの王子様。
姫がご立腹じゃないですか。

「なんなのあの男!」

ぷんぷんという効果音がぴったりだ、と頬を膨らませて腕を組む花音を見る。

「そんなに怒らないでよ、花音ちゃん。あの人はからかって遊んでるだけだから」

「嘘、絶対潤ちゃんのこと狙ってる!あんなにべたべたして、馴れ馴れしい!」

講義前の教室で、ばんっ、と花音が机を叩く。
私はびくっと肩を震わせ、ははっと乾いた声で笑う。

「狙ってるって、ただの友達だってば。あの人の顔見たでしょ。わざわざ私を選ばなくても、女に困ってないよ」

なだめるように言いながら、むしろ花音のほうに言いたい台詞だな、と思う。

「何言ってんの、潤ちゃんとそのへんの女は違うんだよ!自覚してないでしょ!」

「ていうか、その辺の女以下……」

がしりと肩を掴まれて、私は顔を背けてぼそりと呟いた。

恋は盲目ってやつか。
花音の目に私はどう映っているんだ。

「潤ちゃん、あんな男についてっちゃだめだからね!絶対潤ちゃんは渡さないんだから!」

がばっと抱きつかれて、私はうっと目を閉じる。

前途多難。
そんな言葉が、私の頭を横切っていった。

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