「行こっ潤ちゃん!」

「わっ」

ぽかーんと佐伯くんを見ていると、突然花音に腕を引かれて無理やり立たされる。
そのまま引っ張られて連れ去られそうになったので、慌てて鞄を掴むと、今度はがしっとその手を掴まれた。

「後で電話するね」

にっこり笑って、佐伯くんが言う。
その笑顔にうっかりときめく。
すると、花音が私を佐伯くんから遠ざけるように引っ張り、思いっきり彼を怒鳴りつけた。

「潤ちゃんに触らないでよ!」

その声に、ラウンジが静まり返る。
私はあたふたと花音に声をかける。

「ちょ、ちょっと花音っ」

いやいやいや、絶対誤解されてるでしょこれ!

だが、そう思って焦っているのは私だけ。
花音は周りが見えていないようで、ぐいぐい私を引っ張っていく。
佐伯くんは腹を抱えて爆笑している。

ちくしょうあの男、面白がりやがって。
だから会わせたくなかったんだよ、この二人。

思わず後ろを睨んだが、私以上に怒っている花音に引きずられ、転びそうになりながら私たちはラウンジを出た。

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