2
しかし、佐伯くんは素直に頷いて、私の言葉に同意してくれた。
「ほんと、可愛いね」
この人、何考えてるんだろう。
明らかに普段と態度が違う。
絶対こんな気軽に、女の子に可愛いとか言うタイプじゃない。
「潤ちゃんのお友達?」
だけど、花音の態度が少し和らいだので、私は少しほっとした。
「あ、うん、そう。高校が一緒だったの。法学部の佐伯くん」
尋ねられて、私は頷いて佐伯くんを見る。
佐伯くんはにこりと笑い、どうも、と親しげに頭を下げた。
「うちの潤がお世話になってます」
潤!?
呼び捨てにされて、私はばっと佐伯くんの顔を見上げる。
今まで名前で呼ばれたことなんかないんですけど!
佐伯くんは、涼しい顔をして私にも爽やかな笑みを向けた。
「うちの、潤?」
そんな私たちの間に、凍りつくような低い声が聞こえる。
はっとして花音のほうに顔を向けると、彼女は再び眉を寄せ、不快そうに佐伯くんを睨んでいた。
← | →