「なんでこんなところでしょんぼりしてるんですか。おひとりですか」

「……おまえ、高校生の男女二人組見なかった?」

「そんなの腐るほど見ましたけど」

確かに、休日のショッピングモールには腐るほどの学生カップルがいる。
いや、違う。
あの二人はカップルなんかじゃない。

「もしかして、また妹さんですか」

「見失ったんだ」

「何ですか、デートについてきたんですか。最低の兄ですね」

「今頃何かされてたらどうしよう。手とか繋いでたらどうしよう」

想像をかきけすように、俺は髪を掻き毟る。

職場では仕事のできるクールな男として通っている俺だが、妹大好きっぷりは公認だ。
今は部署は違うが、俺が教育係をしてやった鬼澤にはどれだけ歩が可愛いか毎日のように語ってやった。

「まさかそこまでとは思いませんでした。いや、思ってたけど、目の当たりにするとは思いませんでした」

鬼澤は蔑んだ目で俺を見下ろす。
しかし、こいつにどう思われようが関係ない。

「探すの手伝ってくれない?」

「嫌ですよ。というか、こんなとこで暴走してると通報されますよ。そこのカフェにでも入りましょう」

「そんな場合じゃないんだ」

「窓際で見張ってたら、すぐわかるじゃないですか。人通り多いし」

突き当りのカフェを指さして、鬼澤が言う。
少し説得力があったので、休憩をかねてコーヒーでも飲むことにした。
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