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しかし。
あまりの人の多さに、早速二人を見失った。
慌てて周囲を見渡すが、それらしき姿はない。
「あゆ……!」
目を離した隙に何かあったらどうするんだ!
真っ青になって、俺はサングラスを取って必死で二人を探す。
なんでこんなに人が多いんだよ邪魔だ!
このやろう智、あゆに何かしたら絶対許さん!
脳内劇場を繰り広げつつ、広大な敷地を駆け回ったが二人は発見できなかった。
俺は疲れ切って、ベンチに座って項垂れる。
いっそ迷子の放送をかけてやろうか。
でも、そんなことをしたら歩の信頼を損ねるだけなので、俺は頭を抱えてあぁあと嘆いた。
「何してんすか戸田さん」
ふいに、頭上から声が掛かる。
はっとして顔を上げると、声の主が驚いたように身を引いて、長い黒髪がぱっと揺れた。
「……なんだ、鬼澤か」
「すみませんね、私で」
職場の後輩だった。
俺は再び項垂れて、隣の柱に寄りかかる。
こっちが探してるのはこいつじゃなくて歩だ。
落ち込んでいる俺の様子に気づいて、鬼澤は前に立ったまま首を傾げた。
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