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「てめー自分で呼び出しといて遅刻とは何事だ」
案の定、十五分も遅れて駅に着いた歩は、待ち構えていた智に怒られていた。
ごにょごにょと言い訳していたようだが、どうも智には勝てないらしい。
すぱんと頭をはたかれて、さっさと歩き出した彼に慌ててついていった。
「よし、手は繋いでないな」
手を繋ぐどころか、再会のハグまでされたらぶん殴ってやろうと握り締めていた拳は無事に解かれた。
命拾いしたな、智。
暴走中の頭は、もはや世話係の幼馴染の信用さえも見失っている。
二人は大通りに出て、あちこち店をのぞきながら進んでいく。
俺は少し距離を取って、こそこそと彼らの後をついて歩く。
ちくしょう楽しそうにしやがって。
俺なんか貴重な休日を、あゆの見張りにつかってるんだぞ。
時間がたつにつれ虚しくなっていく思考を、俺は首を横に振って振り払う。
いや、でも、これであゆに何かあったら大変だ。
家でなんてじっとしていられない。
サングラスとマスクで一人芝居をしているいい年の男を、不審そうに窺いながら人々が通り過ぎていく。
肝心の高校生二人はまったく気づいておらず、てくてくと先を歩いていく。
二人が入っていったのはショッピングモールだった。
このあたりで一番大きなところだ。
「あゆのやつ、何の買い物があるんだ……?」
ケーキより俺より大事な買い物とはなんだ!
ふつふつと湧きあがってくる嫉妬は、もはや節操がない。
俺も日曜で混雑している店の中へ、人ごみに紛れて突入していった。
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