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日曜日の昼前、歩は遅刻する!と言いながら部屋から飛び出してきた。
寝坊したらしい。
それでもしっかりお洒落していて、ウサギの絵のガーリーなトップス、灰色のパーカー、青と白の水玉のスカート、ニーハイに黄色のパンプス。
と、まだ暑い9月の陽気の中をハイテンションで駆け出して行った。
「いってきまーす!」
可愛いが腹立つ。
そのお洒落も全部智のためだなんて。
そして、歩が家を出た後、俺もすぐに着替えて家を出た。
サングラスとマスクを装備して、ドアを出て気配を窺う。
隣町の駅前で待ち合わせと言っていたから、見失ってもすぐ見つけられるだろう。
「あいつ遅刻じゃなかったのか……?」
しかし、見失う心配など無用だった。
アパートを出た途端、二十メートルほど先であゆが犬と遊んでいるのを見つけた。
「わんこー、下水にカニがいるか見てきなー」
意味不明なことをのたまいながら、近所の飼い犬と一緒に排水溝を覗き込んでいる。
高校生のすることじゃない。
しばらくじっとしていたが、突然はっとしたように立ち上がった。
「しまった遅刻だ!」
そう叫んでいきなり走り出した。
我が妹ながらなんだかなぁ。
智に叱られる光景を想像しつつ、俺はしっかり後を追いかけた。
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