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「智がこっちに出てくるの?」
「うん、日帰りだよ」
顔を引きつらせて尋ねると、歩が遠慮がちに答える。
この前勝手に泊まらせたことを、一応反省しているらしい。
「二人で何の買い物があるの?」
年頃の男女が二人で買い物ってなんだ。
というか、デートじゃないかそれ。
付き合ってないとは言っていたが、実は俺に隠れて付き合ってるのか?
「別に、お兄ちゃんには関係ない」
気まずそうな顔をしながらも、歩はぷいっと横を向く。
どーんと肩に重石をのせられたようなショックがった。
お兄ちゃんには関係ないだと?
なんだこれは反抗期か。
「……俺とのケーキより、智との買い物のほうが大事なの?」
さらに傷つくのをわかっていて、俺はさらに食い下がる。
うっとうしそうな顔をして、歩はソファーから立ち上がった。
「だってあたしが智を呼んだんだもん。こっちのが優先!」
なんだと?
よりによって歩から誘っただと!?
「ちょっと待てあゆ、二人で出かけるのなんて許さん!」
思わず上げた声は、ばたんと閉まるドアの音に遮られる。
追いかけて行って部屋をノックしたが、鍵も締められており歩が出てくる気配はない。
「あゆ!」
「しつこい!」
返ってきた答えに、俺はさらにショックを受ける。
くそ、絶対許さんぞ智!
そしてドアの前でうなだれて、八つ当たり気味にそんなことを思ったのだった。
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