END


「おにーちゃん」

それから約二週間後。
十月に入り、すっかり秋の装いになった頃だった。

「誕生日おめでと!」

綺麗にラッピングされた包みを渡されて、俺は頬に朱を上らせる。

「ありがとうあゆ。覚えててくれたの?」

「当たり前でしょ!ケーキも買ってきたからね!」

恐らくケーキが本命なのだとは思うが、朝からそわそわと期待していた俺としてはそんなことどうでもいい。
帰宅してスーツもそのままに、ソファーに座って喜びを噛みしめる。

「開けてもいい?」

「うん、開けて開けて」

足元に座り込み、うきうきと俺を促す歩はいつもより可愛い。
俺は丁寧にリボンと包装紙を外し、そっと中身を取り出した。

「お、マフラーと手袋。俺の好きな色だ」

濃紺で合わせた二つを手に取って、俺は素直に喜ぶ。
あゆのプレゼントなら何でもうれしいが、これは素でうれしい。

「ありがとうあゆ。明日から会社に着けてくよ」

「うんうん、そうして」

「一人で買ってきたの?大丈夫だった?」

「あのねぇ、智についてきてもらったの。一人じゃ男の人の店入れないから」

「あ、あのときの」

楽しみにしてください、と言った智の不敵な笑みを思い出す。
なんだ、そうか、そういうことか。
デートどころか、俺のためだったのか。

「あゆー!ありがとう、大好きだ!」

「くーるーしーいー!」

ソファーから下りて歩をぎゅーっと抱き締める。
嫌がるそぶりを見せながらも、歩は逃げずに腕の中に収まっていた。

これにて一件落着。

後日、愛用となったマフラーと手袋を自慢しては鬼澤にうっとうしがられ、休日も手放さずに身に着けていたところを智に見られて呆れられるのだった。

END

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