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「それじゃあミレイユ。話の続きは夕食で」
「はい、お兄様」
朝食を終えて、仕事へと向かう前にレイモンはくしゃくしゃとミレイユの頭を撫でる。
ミレイユはどこかうれしそうに声を弾ませて頷く。
「いらん。もう帰ってくるな」
「おまえもこっちだよ」
「俺は急病だ。今日は休む」
「何言ってるんだ。さっさと行くぞ」
ヴィムの首根っこをつかみ、妻へいってきますのキスをして、レイモンは歩き出した。
ずるずると引きずられていくヴィムは、未練たらたらに手を振るミレイユを振り返る。
くそ、せっかくミレイユが人の姿になっているというのに。
話ができるチャンスだというのに。
仕事なんか行きたくない。
そう思ってるのが全身から滲み出していたのか、レイモンが手を離して呆れたように溜息をついた。
「飼い主のほうが手が掛かるな。ミレイユとは毎日一緒にいるだろう」
「人の姿になるのは貴重なんだ。おまえだって知ってんだろ」
「帰ってからたくさん話せばいい。朝も十分一緒にいたじゃないか」
「また獅子の姿になってたら絶対許さないからな、おまえ」
子供っぽく八つ当たりするヴィムの態度に、レイモンは苦笑した。
まったく、これではミレイユのほうがずいぶん聞き分けがいい。
レイモンがミレイユにするように頭を撫でてきたので、ヴィムは恥ずかしくなってその手をぱしんと払いのけた。
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