6
ヴィムが部屋に戻って着替えて来ると、ちょうどミレイユも耳としっぽを綺麗にたたんで着替えを済ませてきた。
朝食の席にはすでにレイモンとアデリアが座っている。
珍しく人の形を取っているミレイユを見て、レイモンがうれしそうな顔をした。
「おはようミレイユ」
「おはようございます」
「久しぶりにおまえの声を聞けたな」
隣でだらしなく目尻を下げる夫には慣れっこな様子で、アデリアはつんとすまして表情を変えない。
対してヴィムは不機嫌に眉を顰めた。
妹に対する愛情だとわかっていても、ミレイユにそんな目を向けられるのは気に入らない。
「俺のミレイユに話しかけんな」
じろりと睨むと、レイモンが呆れたように苦笑する。
「話をするくらいいいだろう。厳しい飼い主だな」
「見られるのも嫌だ。嫁のほう見て飯食え」
「馬鹿な言い合いに私を巻き込まないで」
ヴィムの言葉に、アデリアは嫌そうに眉を潜める。
ミレイユは困った顔で、何も言わずにヴィムの隣に座った。
なんてことのない、いつものやりとりだ。
「あ、そういえばおまえ、昨日のパーティー途中で抜けただろ」
後腐れなく、会話は次の話題に移る。
厄介な話をレイモンが口にしたので、ヴィムは都合よく無視して朝食に手をつけた。
← | →