3
ワインを飲んで、気持ちよく眠って、鳥の声で目が覚めた。
いい朝だ。
ヴィムは何度か瞬きをして、伸びをする。
伸ばした手を下ろそうとして、指先がくしゃりとしたものに当たった。
そうだ、ミレイユを隣に寝かせたはず。
そう思って、顔を横に向ける。
下ろした手の向こうに、何やら黒いかたまりが見えてヴィムは一気に目が覚めた。
「……うわ」
触れたのはミレイユの髪の毛。
一緒に寝たはずの獅子の毛並みではなく、人の姿の巻き髪だ。
「まいったな」
と口に出してはみたものの、全然まいってはいない。
むしろラッキーだとすら思っている。
ヴィムは指先にくるりと彼女の髪を巻きつける。
人の姿の彼女を見るのは久しぶりだ。
体力を消耗するので、ミレイユはあまりこちらの姿を取りたがらない。
どうせならこっちを向いていてほしかったな。
ヴィムはそう思いながら、シーツから出た細い肩を眺める。
その真っ白な肌に触れたくなるが、指先で髪をいじるだけでぐっと我慢する。
この子に手を出すと、中の神様やレイモンに罰を与えられることになるのはすでに経験済みだ。
自分はそれでもかまわなかったのだけれど、ミレイユがヴィムを庇って泣くのでそれは避けたかった。
カーテン越しに部屋を満たす日光が、柔らかく彼女の肌を包む。
ふわふわとまどろむような時間に、都合の良い夢でも見ているのかと思う。
髪を撫でると、隠しきれなかった獣の耳がぴくりと動いた。
それがたいそう可愛くて、ヴィムは思わず笑みを漏らした。
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