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パーティー会場から抜け出てきたヴィムは、レイモンにばれないようにミレイユの部屋へ隠れた。
蝋燭をひとつ灯し、上着を脱いでワインを開けて長椅子に腰を下ろす。
「ミレイユ」
ぽんぽんと膝を叩くと、カーテンの隙間から外の様子を窺っていたミレイユが近づいてきた。
ヴィムの隣に座って、彼の膝にあごを置く。
「大丈夫。もうお開きだよ。そろそろみんな酔いが回ってるからな」
ヴィムが会場を抜け出してきたことを気にしているらしいミレイユに、彼は安心させるように言う。
「ケーキでもくすねてきたらよかったな。夕食はちゃんと食べた?」
尋ねると、ミレイユは肯定するようにわふっと鳴く。
大きな体で随分可愛らしい声だ。
同様に、性格も見た目に反して大人しく、臆病なほどに内気な子だ。
獅子の姿は彼女には似合わない。
ヴィムはグラスから掌にワインを落とし、ミレイユの前に差し出した。
彼女は迷うようにすんすんと匂いをかいだが、結局はぺろりと酒を舐める。
そしていつもどおり顔を顰める。
それを見てヴィムは声を上げて笑い、拭った手でミレイユの顎をくすぐるように撫でた。
「うちのお姫様はまだまだのようだ。いつになったら一緒に呑めるようになるのかな」
ミレイユは不満気に喉を鳴らしたが、ヴィムの手は振り払わずに撫でられるがままになっている。
首輪につけたリボンが、蝋燭の灯りに揺れる。
パーティーで大勢に囲まれているより、二人で晩酌をしているほうがずっといい。
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