※パラレル
(もしもヴィムとミレイユの立場が逆だったら)


「ミレイユ」

本棚の陰からのぞくしっぽに、ヴィムはそっと近づいて声を掛ける。

「またこんなところでかくれんぼか」

小さく丸まった体から、困ったようにこちらを見上げる顔。
ヴィムは膝をついて、両手を広げてみせた。

「おいで」

ミレイユは躊躇ったようにちらちらと様子を窺った後、立ち上がってこちらにやってくる。
ふわふわの毛がヴィムの頬をくすぐった。
頭を抱いて撫でてやると、彼女は気持ちよさそうにぐるると喉を鳴らした。

「みんなおまえに会いたがっていたのに。パーティーは嫌いか」

ヴィムはミレイユを促して書庫を出る。
部屋に向かいながら首の蝶ネクタイを解くと、ミレイユは後ろめたそうな申し訳なさそうな表情でこちらを見上げた。

「まぁおまえが人見知りなのはわかってるよ。いつも俺の前にしか顔を出さないと評判だからな」

呆れたように言いながらも、ヴィムの顔は満足気だ。
ミレイユは彼が内心喜んでいることを知らず、しょんぼりとしっぽを下げた。
その様子に笑って、ヴィムは彼女の頭を撫でる。

可愛い俺のミレイユ。

むしろ、ミレイユが他人に愛想を振りまくようになれば、ヴィムはそれこそ嫉妬で怒りだすに違いないのだった。

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