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レモンバターのチキンソテー、マッシュポテト、サラダ、キノコのスープにベリージャムのヨーグルト。
お洒落なカトラリーと美味しいごはんに満足して、私はすっかり機嫌を直した。
「世の女子たちは、こんな素敵なお店で楽しいランチをしているんですね」
「そうだな」
「たまには外にも出てみるもんですね」
「そうだよ、おまえがひきこもらなければランチくらいはできるんだよ。別に夜出かけてもいいんだし」
鋭い指摘をされて、私はうっと口ごもる。
怒られるわ太陽はきついわ、もうしばらく外には出ないと思う。
「漫画の発売日とかに出ます……」
「はいはいそうですね」
旭は返事がわかっていたようにおざなりに返事をする。
こうして見透かされているのが悔しい。
今日だって結局、旭のプランになってしまうのだ。
「元気出た?」
「はい」
「じゃ、行くか。すげぇ晴れてるけど、せっかくだし頑張れよ」
「はい……」
「何かあってもちゃんと連れて帰ってやるから」
立ち上がった旭が、私の頭に手を置く。
もう全部まかせようと、私は安心して頷いた。
こういうかたちが私たちには合っているのだろう。
アンティークのドアを開けると、きらきらと眩しい世界が待ち構えていた。
ぼうっと空を仰いだ私の手から日傘を取り、旭が手早く差しかけてくれる。
「ほら、行くぞ」
促されて、私は旭の腕を掴んで歩き出す。
なんだかんだ、並んで歩き始めるだけでわくわくしてしまうのだった。
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