END
「友達が欲しいなら女紹介するから」
ちょっと気分を落とした私をなだめるように、旭が溜息をついて言った。
「……いらない」
「なんで」
「なに、女紹介するとか」
「……妬くなよ」
旭は機嫌が良くないままの低い声で言ったが、その横顔を見ると緩んだ頬を隠すように唇を噛んでいた。
単純な奴だ。
そうこうしているうちに、旭の自宅に車が到着する。
降りようとしたところを肩を掴まれ引き止められて、何だと思って振り向くと、噛みつくようにキスをされた。
「二人で会うなよ」
「二人じゃなきゃ会ってもいいんですか」
「……俺が一緒ならな。おまえ友達いないから、特別だ」
苦々しい表情ながらも許可をもらって、私はくすりと笑みを漏らす。
お礼の代わりに旭の首に腕を回して、軽く頬にキスを落とした。
「知ってると思いますが、私にはあなたしかいないんですよ」
「……知ってる」
旭の腕が背中と腰に回る。
安心したように彼の肩から力が抜けるのを感じて、私は頭を撫でてやった。
内田くんと話すのは楽しかったが、こんな手の掛かる恋人がいては友達どころじゃないな。
ずっと側にいてくれた幼馴染より大切な人がいるわけもなく、私はあっさりその心の狭さと独占欲を許してしまうのだった。
END
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