車に乗り込んで家に向かう途中、旭は変わらず不機嫌のような微妙なオーラを漂わせていた。
せっかく楽しい気分で家に帰れると思ったのに。
買ったゲームも漫画も台無しだ。

「おまえさー」

私がどうしたもんかと窓の外を眺めていると、旭のほうが口を開いた。

「知らん男に声掛けられて、ほいほい懐くなよ」

思いがけないことを言われて、私は目をぱちぱちさせる。

「いや、知らん男って、あなたのお友達ですよね?」

「おまえは知らんだろ」

「でも、あなたの友達を無視するわけにもいかないじゃないですか」

「いい、別に。他の男としゃべんな」

前を向いたまま口を尖らせた旭を見て、本気で嫉妬してるのだと理解して私は吹き出す。
笑うな、と旭の手が伸びてきて頬をつねる。
照れた顔が可愛くて、さらに笑みが零れてしまった。

「楽しかったんですよ。私、ゲームとか漫画の話できる人いないから」

「そりゃまぁ気が合うのはわかるけど。仲良くなってもらっちゃ困るんだよ」

「心配しなくても浮気はしませんよ」

「あてにならねぇんだよ、おまえ。前科があるだろ」

いや、前科というのは付き合う前の諸々であって、別に浮気したわけじゃない。
気まずくなって黙り込むと、旭はふふんとこちらに目を向けた。

|
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -