「なんだよその目は」

私が二人のやりとりに微笑ましく目を細めていると、旭が不機嫌そうに抗議してくる。

「いえ、仲良しでいいなぁと思いまして」

「おまえ友達いないもんな」

「そうなの?じゃあ俺が友達第一号?」

「勝手に友達とか言ってんじゃねぇよ」

ずいっと会話に入ってきた内田くんを、旭がうっとうしそうに押しのける。

友達だと?
この私を友達扱いしてくれただと?

「うれしそうな顔してんじゃねぇ」

私が驚いて顔を紅潮させていると、旭がこちらの頭をぺしんと叩いた。

「いいじゃんねー。オタク友達、よろしくー!」

旭の言葉にかまわず、内田くんがにかっと笑って手を差し出してくる。
こくこくと頷いて、私も手を差し出そうとしたが、手首を旭に抑えられた。

「なんでもいいけど、触んな」

その低い声に、私は反抗できず口を尖らせる。
内田くんは差し出した手を引っ込めながらも、けちー!なんてぶーぶー言っている。

「じゃあ今度はゲーム談義しようねっ!今日はありがと!」

店を出た後、内田くんは別れ際に手を振りながらそう言った。

「ぜひ。こちらこそありがとうございました」

「うんっ。森川、また学校で!」

「おー、またな」

「みんなに今日の報告しとくわ!天下の森川くんが彼女に骨抜きでしたよーって」

「やめろ。……やめてください」

気まずげな旭の態度に腹を抱えて笑い、内田くんは最後まで賑やかな様子で帰って行った。
その後ろ姿を見送って、私たちは顔を見合わせる。

「帰るか」

どこか疲れた様子で息を吐き、旭が私の手を引いて歩き出す。
なんだか申し訳ない展開になったなぁと思いながらも、思いがけず楽しく過ごせた時間に、私の胸はまだどきどきしていたのだった。

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