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そこで、ふと視線を感じた。
はっとガラスの向こうに目を向けると、眉間に皺を寄せた旭がこちらを向いて立っていた。
「あ、森川」
内田くんも気がついて、旭に向かって無邪気に手を振る。
旭は訝しげに首を傾げて、店内へ向かって歩き出した。
なんだか機嫌がよろしくない。
勝手に旭の友人と話をしていたのが悪かっただろうか。
「なんで内田がいるんだよ」
「いやー偶然会って声掛けちゃった!そんで仲良くなっちゃった!」
「嘘つけ。こいつ極度の人見知りだぞ」
内田くんが真ん中の席に旭を促し、旭も躊躇いなくそこに腰かける。
「まぁほとんどしゃべってたのは俺だけどさ、なーんと今日同じゲーム買いに来たんでした!すごくない?」
「あぁ、オタク同士気が合ったのか」
「何その見下した目!オタク文化は日本の誇りです!」
内田くんがばしんと膝を叩いて断言する。
なにこのオタクかっこいい。
私なんかけなされっぱなしなのに。
憧れと尊敬のまなざしを送っていると、旭がこちらをぎろりと睨んだ。
だからなんで怒ってるんだこの人。
私が軽く怯んでいると、その様子を見た内田くんが、なぜか笑いを堪えるように口元を抑えて喉を鳴らした。
「彼女が他の男としゃべるだけで嫌なの?」
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