最新刊出たんだ、と内田くんが言うので、私は漫画を差し出した。
彼はちゃんと手を拭いてありがとうと受け取り、ぱらぱらっとページをめくる。

「俺も帰りに買って帰ろ。これ、女の子が読んでも面白い?」

尋ねられて、こくこくと頷く。

「この漫画かなりシュールじゃん。笑っていいのか笑うべきなのか笑いたいのか俺?みたいな」

その言い方がかなり的を射ていて、思わずふふ、と笑みを零す。
内田くんもへらりと笑った。

「シュールなのが好き?」

「うん」

「じゃあこの作者好きだね」

「うん、全部持ってる」

「まじで!いいな!俺も揃えようか迷っててさー!」

私の答えに、彼は表情をぱっと輝かせる。
それからこちらに体を向けて、熱く作者と漫画の魅力について語り出した。

人を見た目で判断してはいけない。
旭の友達とは思えないこの理解の良さ。
あいつなんて私の部屋で好き放題読み漁っていて、ただの暇つぶしだとのたまう嫌な奴なのに。

私はうんうんと頷いているだけだったけど、他人とこんなふうに漫画の話をすることなんてなかったから、聞いているだけで楽しかった。
人見知りの私にも気を遣ってか色々質問してくれたし、私の下手な返事にも楽しそうに笑ってくれた。

なんていい人だ内田くん。
顔も覚えていないどころか、怯えてしまって申し訳ない。

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