「一度駅で会ったことあるんだけど、覚えてないかなー。俺ね、森川くんと同じ大学」

人懐っこく笑う彼の顔に見覚えはない。
限界まで脱色したような金の短髪。
美大生のような癖のある服装。
目立つ容姿をしているが、記憶にない。
が、駅で会ったとすれば、映画の帰りに旭と会ったあの時だろう。

「内田と言いまっす。よろしくね。怪しいもんじゃないですよ」

「……よろしく、です」

「わーお。ほんと、声まで可愛い。通ってく人みんな振り返ってるよ」

彼はガラスの向こうを指差して、無邪気に笑う。
私は逆に気まずくなった。
できるだけ目立たないようにしたいのに。
俯いた私に首を傾げて、内田くんはガサガサとサンドイッチの包みを開け始めた。

「今日は一人?森川は?」

「これから、迎えに来てくれる」

「そうなんだー。あいつ見かけによらず健気だよね。まぁこんな可愛い彼女がいたら、俺だって飛んで帰るけどさ」

内田くんはけらけらと笑う。
私は首を捻った。

健気?
まぁ、ひきこもりの私のところにせっせと通ってきてくれるくらいだから、健気と言えるかもしれない。
あの態度のでかさが邪魔をして、そんな謙虚な言葉で表したことはないが。

「ていうかさー、美夜ちゃんも見かけによらず、漫画とか読むんだね。俺もその漫画ちょう好き」

サンドイッチをもぐもぐさせながら、内田くんが私の前にある読みかけの漫画を指差した。
私は目を丸くする。
まさか同じ漫画を読んでいる人と、ネット以外で会えるとは!

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