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口うるさいが、行動は優しい。
誰よりも私に厳しくて、そのくせどこまでも甘やかしてくれる。
「プリン買って来たので、どうぞ」
「あら、ありがとう」
「今日給料日ですか」
「おまえが食べたいって言ったんだろ」
食後三人でテーブルを囲んでいたところに、バイトから帰ってきた旭がコンビニの袋を置いた。
晩酌に付き合わせようと、父が彼を座るよう促す。
母が眉を寄せて呆れた顔をした。
私は袋からプリンを取り出して、みんなの前に配る。
「旭、あんたこのこを甘やかしすぎよ」
「はぁ?なにが」
「こうやって買い物までしてきちゃうから、ますます外に出なくなっちゃって」
「いいじゃないか。美夜が外に出る必要なんてないだろう」
母が父を睨んだが、父は目を合わせず旭のグラスにビールを注いだ。
いつもは母の言いなりになっている父だが、私のことになると頑として譲らない。
「私、ちゃんと外にも出てるもん」
空気が悪くなりそうだったので、仕方なく私は口を開く。
「漫画かゲームのためだけでしょ?」
「おばあちゃんちに行くときだって」
「もうちょっとまともに日常生活送れるようにしなさい」
注意されて、私は口を尖らせた。
母はなめらかな手つきでプリンの蓋を開け、旭を見てにやりと笑う。
「それで、たまには外でデートでもしてきなさい」
旭がグラスを持ち上げようとした手を一瞬止めた。
私はさらに不機嫌に眉を寄せる。
私が気にしていることを見抜いていてずけずけと。
父は黙って苦笑を浮かべ、旭はぐいっとグラスを呷った。
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