7
カラオケ店から出て、飯でも食いに行こうかというときだった。
携帯に美夜から着信が入っていたので、友人たちから少し離れて掛け直す。
繋がらない。
あいつから掛けてくるなんて、何かあったのだろうか。
少し心配になってしまう。
「あれって人形?」
四人は少し先で立ち止まって、食事の相談をしていた。
そんな中、どこかに視線を向けてわいわいと話している。
「いや、生きてるでしょ」
「動いてるよ」
「うわ、めっちゃ美人」
「え、日本人?ハーフ?」
こそこそと指差す視線を辿る。
そこではたりと気がついた。
「美夜」
なんでこんなところにいる!
待ち合わせ広場のベンチに、なぜか美夜が座っていた。
俺は友人たちの存在も忘れて、ぱっと駆け寄る。
「おまえ何してんの」
声を掛けると、こちらに気づいてぱちりと目を瞬かせる。
それから少し安心したように息を吐いた。
黒いワンピースを着た美夜は、いつにもまして色白に見える。
というか、顔色が悪い。人酔いでもしたか。
「映画見てきたの。帰り一緒になるかなと思って、電話したんですけど」
「俺も今掛け直したよ」
「え、ほんとだ。気づかなかった」
美夜は鞄から携帯を取り出して、ぽけっと首を傾げる。
こいついつからここにいるんだ。
電話が入っていたのが二十分ほど前だから、そんなにたっていないと思うけれど。
「旭、知り合い?」
背中に声が掛かって、俺は友人たちを放り出してきたことを思い出した。
振り向くと、興味津々な顔が四つある。
「彼女?」
尋ねられて、少し迷って、頷いた。
隠す理由もない。
美夜には悪いが、少し付き合ってもらおう。
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