カラオケ店から出て、飯でも食いに行こうかというときだった。
携帯に美夜から着信が入っていたので、友人たちから少し離れて掛け直す。
繋がらない。
あいつから掛けてくるなんて、何かあったのだろうか。
少し心配になってしまう。

「あれって人形?」

四人は少し先で立ち止まって、食事の相談をしていた。
そんな中、どこかに視線を向けてわいわいと話している。

「いや、生きてるでしょ」

「動いてるよ」

「うわ、めっちゃ美人」

「え、日本人?ハーフ?」

こそこそと指差す視線を辿る。
そこではたりと気がついた。

「美夜」

なんでこんなところにいる!

待ち合わせ広場のベンチに、なぜか美夜が座っていた。
俺は友人たちの存在も忘れて、ぱっと駆け寄る。

「おまえ何してんの」

声を掛けると、こちらに気づいてぱちりと目を瞬かせる。
それから少し安心したように息を吐いた。
黒いワンピースを着た美夜は、いつにもまして色白に見える。
というか、顔色が悪い。人酔いでもしたか。

「映画見てきたの。帰り一緒になるかなと思って、電話したんですけど」

「俺も今掛け直したよ」

「え、ほんとだ。気づかなかった」

美夜は鞄から携帯を取り出して、ぽけっと首を傾げる。
こいついつからここにいるんだ。
電話が入っていたのが二十分ほど前だから、そんなにたっていないと思うけれど。

「旭、知り合い?」

背中に声が掛かって、俺は友人たちを放り出してきたことを思い出した。
振り向くと、興味津々な顔が四つある。

「彼女?」

尋ねられて、少し迷って、頷いた。
隠す理由もない。
美夜には悪いが、少し付き合ってもらおう。

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