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その次の日曜日、私はマスターから習って来たレパートリーを食卓に並べた。
ハンバーグを煮込みすぎて形が崩れたが、食べられないこともないしまぁ及第点だろう。
並べられた料理を見て、社長は目を丸くした。
いつにない豪華さに戸惑っている。
喜ぶどころか、怪しんでいる様子さえ見せている。
「……なに?」
「食べたいかと思って」
「……それだけ?」
「給料日だし」
私の答えに少し納得した様子を見せ、彼はようやく席につく。
失礼な男だ。
私をどれだけケチな女だと思ってるんだ。
いつもどおり、いただきますと手を合わせ、食事を始める。
私はちらりと彼の様子を窺う。
初めて作る料理のときは、ちょっと緊張してしまう。
真っ先にハンバーグに手をつけ、一、二口噛んで、社長はぴたりと動きを止めた。
なんだ。まずいのか。
思わず動揺したとき、ぱちりと社長と目が合った。
彼は再び咀嚼し始める。
それからごくんと飲み干して、そっけない口調で感想を述べた。
「悪くない」
それで私はほっとする。
彼がこう言ったということは、それなりに美味しいということだろう。
他の料理に関しても文句は出なかった。
好物ばかりだして正解だ。
社長の反応に安心して私も食事を楽しみ、空になった皿にますます嬉しくなって口元が緩んだ。
彼もどことなく機嫌が良い。
食後、マスターからお土産で持たされていたワインを開けていた。
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