6
ばしっと背中に衝撃が走って目が覚めた。
目を開けようとするが、眩しくてまぶたが持ち上がらない。
もう朝か。
とはいえ日曜なのでもう一眠りしようと、なぜか腕に抱いていたぬいぐるみを抱え直すと、今度は肩をゆすられた。
「なんでこんなとこで寝てるの。着替えもしないで」
降ってきた声に、目を開く。
こちらを覗き込むのはしかめっ面の見慣れた顔。
「りょう」
手を伸ばすと、さらに眉間に皺が寄ったが、彼女は自分の手を重ねてくれた。
安心する。
この広い家にひとりは嫌だ。
「昨日かなり飲んだんですか」
「そうでもない」
「だったらなんでこんな時間まで寝てるんですか。お昼ですよ」
そう言われて壁の時計を見上げると、確かに正午過ぎている。
「おばあちゃんに昼ごはんもらってきたから、起きて。シャワー浴びてきて」
急かされて、しぶしぶ起き上がる。
その拍子にごろんとペンギンがソファーから転がり落ちた。
「あ、銀!……なにこれ酒くっさ!ちょっと、私の銀に何してくれてんの!」
「そこに転がってたんだよ」
「だってそこが銀の場所でしょ!もぉお、これ洗わないと……」
慌てたようにぬいぐるみを拾い上げた凌が、鼻を近づけて顔を顰める。
説教が始まるかと思ったが、途中で言葉がぴたりと止まった。
「……もしかして、私がいなくて寂しかったから銀と寝てたの?」
何を言うかと思えば。
凌の目が悪戯っぽくこちらを見上げて、にやりと口角が上がる。
しかし、図星だったので言い返す気力もなく、俺は黙って立ち上がった。
「よかったねぇ銀。仲良くなれた?」
「うっせ黙ってろ」
「素直じゃない旦那様ですねー」
にやにやとからかう視線を向けられて、俺は逃げるように風呂場へ向かう。
くそ、やっぱりあのペンギンは気に入らない。
昨晩のことを掻き消すように、俺はシャワーの冷水を思い切り頭にかぶせた。
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