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俺がゼミの飲み会だったある日、凌は祖父母の家に泊まりに行った。
日付をまたいで帰宅すると家は真っ暗で、リビングの明かりをつけても物音ひとつなくしんと静まり返っていた。
こんな夜は苦手だ。
凌と出会ってから、仕事もプライベートも一緒にいるせいで、一人が余計に苦手になってしまった。
俺は荷物を床に投げ出し、上着や靴下を脱いでごろりとソファーに寝転がる。
家に着いた途端アルコールが回ってきた。
ぐるぐると眠気のうずまく頭を抱えて横を向くと、目の前に白い腹が見えた。
「……おまえも留守番か」
目線を上げると、まっすぐ前に向けられたくりくりの目。
俺は腕の中にぬいぐるみを引っ張り込み、酔った頭で話しかけた。
「なんでいないんだよおまえのご主人様は。旦那が帰ってきたっていうのに。俺に一人で寝ろってのかよ」
いや、たまには泊まりに行って来いと言ったのは俺だ。
が、実際行ってしまうと後悔する。
「おまえ、いっつもべたべたしてくる奴がいなくて寂しいんだろ。つか、べたべたしすぎなんだよ。職場までついてくんなよ。旦那は俺だぞ自重しろ」
ぐちぐちと喋りかけながら、頭のすみっこで、ああ完全に酔ってるなと自覚する。
俺は酒臭い息で溜息をついた。
ペンギンの表情は変わらず、じっと俺の隣で丸い体を横たえている。
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