今日の午前中は大学だった。
外勤の用事があったので凌に車を持たせ、俺は午後から職場に出向いた。

そして、大学から戻ってきてみたら、だ。
いるはずのない奴が、凌のデスクに座っていた。

「おい、なんでこの鳥がここにある」

外の仕事から戻ってきた凌をつかまえて、ぬいぐるみを投げつける。
顔面で受け止めた凌はすぐに戦闘態勢になったが、それよりも慌てて床に落ちたペンギンを拾い上げた。

「だから投げないでって言ってるじゃないですか」

「職場にまで持ってきてんじゃねぇよ」

「だってクッションじゃ落ち着かなかったから」

どういう理屈だそれは。

凌は俺を睨み、ほこりを払うようにぬいぐるみを撫でて、きちんとデスクに座らせる。

そういえば、最近落ち着かなさそうに膝に置くクッションをとっかえひっかえしていた。
いつもこのペンギンを抱いているせいで、膝に何かのせておくのが習慣になっているらしい。

だからって持ってくるか普通。
小学生かこの女。

「職場にそんなもん持ち込むな、ここは遊び場じゃねぇ」

「いいじゃないですか二人なんだし」

「良くねぇよ。目障りだ」

俺が睨むと、凌は拗ねた顔をしたが口は噤んだ。
自分が悪いのは自覚しているのだろう。
一応ここは職場だし、俺が社長だということを尊重してくれている。

「今日で持ち帰るように」

「……はい」

「今度持って来たらゴミ箱行きだからな」

「鬼!」

凌は庇うようにぬいぐるみを抱き締める。
俺が悪役かこのやろう。
変なところで子供っぽさを見せる嫁に、俺は溜息をついて首を振った。

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