「今、君の話を聞いてたんだ。いい奥さんになってるそうだね」

「は?……そうですか」

俺の言葉に、小谷は不審気に眉を顰め、隣に座る旦那さんを見た。
彼は片眉を上げて視線を返す。
小谷は彼に何も言わず、鼻で笑ってそう頷いた。

「先生も早く結婚したいな。うらやましい」

「遠距離の彼女はまだ来てくれないんですか」

「な、なんでそれを!」

俺はぎょっとして目を見開く。
気を取り直して言ってみると、返ってきたのは斜め上の返事。

なんで俺の恋愛事情を小谷が知っている!
生徒に彼女がいるなんて話したことなかったのに!

「先生は隠してるみたいですけど、みんな知ってましたよ。クリスマスとか誕生日とか、機嫌の良し悪しで彼女と会ったかどうか探ってましたよ」

なんてことだ!

俺は口をぱくぱくさせて、しれっとした顔の小谷を見る。

なんだそれ恥ずかしい!
一体どこから漏れたんだ!
公私混同しないようにしてたのに!

「職員室で惚気てても筒抜けらしいので、気をつけて」

思考を読んだように小谷がにやりと笑う。

この子、変わってないどころかパワーアップしている。

俺は完全に脱力してテーブルに突っ伏した。

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