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夕食時のフードコートはわりと賑やかで、学生の姿が多い。
ちらほら俺と同じ仕事帰りのサラリーマンやOLの姿もある。
正面に座る青年は、この場からどこか浮いていて、若者のわりにファミレスやファーストフードの類が似合わない印象があった。
妙に居心地悪そうで、むしろこういう場所を嫌いそうだ。
不思議と立ち振る舞いに品がある。
「小谷と仲良くやってるんですね」
「まぁ、そうですね。ケンカもよくしますが」
「すごく驚いたんですよ、卒業式。いきなり結婚って」
「すみません。俺が早く籍入れたくて」
俺の言葉に、彼は苦笑いを浮かべる。
それはちょっと意外だった。
小谷も彼も結婚などに興味はなさそうに見えるが、どうやら彼のほうが積極的だったらしい。
「小谷はいい奥さんになりましたか」
「そうですね。僕は家事は苦手ですし、一人じゃ何もできないので、家のことではとても助かってます」
「しっかりしてますよね、彼女は。もうほんと、去年までは散々泣かされましたが」
「ちゃんと学校通えって言ってたんですけどね」
俺の溜息に、彼はそう答えて呆れたような顔をした。
小谷の学年が卒業して半年以上たつ。
いわゆる不良ではなかったが、小谷は浮いた存在という意味で問題児だった。
高校生で学費や生活費を自分で稼がなければならない環境にいる彼女には、学校は合わなかったのだろう。
同級生とも精神年齢の差は明らかだった。
でも、だから、学校生活くらい楽しんでほしかった。
本人にとっては余計なおせっかいだっただろうが、俺の性分でどうしても世話を焼かずにいられなかったのだ。
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