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家事を終えてソファーで一息ついていると、ビールを飲んでいた社長がごろりと膝に寝転んでくる。
猫みたいだなぁと髪を撫でてやると、嫌がるそぶりもなくすり寄ってきた。
「疲れた?」
「んー」
「もう一缶取ってこようか」
「いい。ここにいて」
気を利かせてやったのに、社長は私の手を掴む。
「……なんか眠くなってきた」
「長時間日差し浴びると眠くなるよね」
「あとメシ食いすぎた」
「引っ越してきて良かった。野菜たくさん食べてくれるようになって。自分で作ると美味しいでしょ」
「そうでもない」
素直じゃないやつめ。
私が笑いを堪えていると、社長がゆるく手を引いた。
「もう寝よ」
「どうぞお先に。私まだ眠くない」
「俺を一人で寝かす気か」
「また子供みたいなことを」
思わず呆れてそう言うと、社長はふてくされた顔をして私の腰に手を回してきた。
今にもここで寝てしまいそうな雰囲気だ。
私はもう一度彼の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
「寝る前にグラス片付けて。ハミガキして」
「一緒に寝てくれたらする」
こいつはどこのクソガキだ。
私はさっと横によけて、ぼすんと社長の頭をソファーに落としてやる。
怒られる前に立ち上がって、先に洗面所に向かった。
ハミガキを終えて、先に寝室のベッドでごろごろしていると、遅れて社長がやってくる。
電気を消してさっさと隣に潜り込み、私を抱き寄せてふうっと体の力を抜いた。
「おやすみ」
「ん」
小さく返事が聞こえ、しばらくするとすやすやと寝息が聞こえてくる。
つられて私もうとうとし始め、彼の胸に顔を寄せて夢の中へと落ちていった。
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