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マンションが事務所になったので、一気に快適な職場になった。
社長は家賃も浮いたしとご満悦だが、大きな買い物をしたことを忘れないでほしい。
キッチンとダイニングが休憩室のようになり、いつもそこで昼食を食べている。
今日のメニューは、ネギとツナの和風パスタだ。
「これ、うちの野菜?」
「そうですよ。美味しいでしょう」
「まぁまぁ」
彼がまぁまぁというのは美味しいということだろう。
この人はまずいときはまずいとはっきり言う。
「わざわざ職場に持ってくるとはご苦労なことだな」
「買い物行くほうが面倒じゃないですか」
「まぁ、毎日豆腐やらもやしやら食わされるよりはいいけど」
「今日なんてツナ入りですよ。贅沢じゃないですか」
私の言葉はスルーして、社長はせっせとパスタを巻きつけている。
嫌なら弁当を買えと言っても、私の作ったものを食べるくせに。
買いに行くのが面倒なのか、同じものが食べたいのか、子供のような男だ。
「今日、夕食はほうれん草ですよ。バターソテーとおひたしと、どっちがいいですか」
「ソテー。コーン入れて」
味覚まで子供みたいだ。
私はくすりと笑みを零し、差し出された皿を受け取っておかわりを入れてきてやった。
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