夏の盛り。
三ヶ月たって新しい家にも住み慣れた。

たまにマスターも来るし、祖父母も来てくれるし、一度社長の両親もきた。
案の定、社長は体調を崩した。
だけど、食事に連れて行ってくれたりプレゼントをくれたりするので、私は彼らが好きだ。
庭の畑っぷりには苦笑いしていたが。

「なんで休日まで労働しないといけないんだよ」

「だから昼寝でもしててって言ってるでしょ」

ぶーぶー言いながらうずくまっている社長を軽くいなして、私はざくざくと雑草を抜いていく。
仕事でも二人でいるのに、家にいてもべったり。
一人でいるのが嫌いらしい。
だったら友達のひとりも作ってみろと言いたくなるが、いかんせん人の好き嫌いが激しすぎる。

「もういいだろ、けっこう頑張ったよ俺たち」

「はいはい、じゃあこのザルに水菜とニラ採って」

「晩ごはん、水菜なの」

「今日はとんかつとサラダにします。それからニラのかき玉汁」

社長は基本的に野菜は好きじゃないが、サラダが異様に好きだ。
特に水菜が好きらしく、自分で買ってきて植えたほど。

「食べられるぶんだけ採ってね」

明らかに機嫌を良くして、社長は収穫に取り掛かった。
私は早々に声をかけておく。
そうでもしないと、ザルいっぱいに採ってしまって、食べられないと逆ギレするからだ。

「こんくらい?」

「水菜多すぎ。ニラ少なすぎ」

「いや、こんなもんだろ」

何度言っても学習しないやつだ。
私が睨むと、しぶしぶニラを追加する。
ほんとに困ったやつ。
それでも、予想しなかったことに庭しごとを手伝ってくれるので、なんだかんだ助かっているのだった。


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