私が黙々とお弁当を食べていると、ふいに堀くんは、私が持ってきた本に手を伸ばしてきた。
びっくりしたが気にしないふりをしていると、彼はぱらぱらとページをめくり、そのまま黙って読み始めてしまった。

私はいつも、文庫本を二冊ほどランチバッグの中に入れてくる。
だから堀くんが読んでいても全くかまわないのだが、それらが彼が読むような本だとは思えない。

私は教科書に載っているような文学が好きなのだ。
漱石だとか芥川だとか、カフカだとかドストエフスキーだとか、そんなものばっかり読んでいる。
どう考えても、彼が好むとは思えないようなものばかりだ。

だが、それから堀くんは来るたびに本を読むようになった。
ただの暇つぶしなのかもしれないけど、意外に熱心に読んでいた。

九月には体育祭。
十一月には文化祭。
私の大嫌いな季節が過ぎていって、外にいるには寒い季節になっても、私たちは相変わらずそこにいた。

一学期と変わらず私はお弁当を食べ、本を読み、堀くんは煙草を吸い、そして本を読むようになった。
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