「レイモンに聞く必要はない。あいつの許可なんか必要ない」

ヴィムの声のトーンが落ちる。
ミレイユは戸惑ったように彼の腕から身を引いた。

「でも、勝手に出るわけにはいかないじゃない」

「勝手に出るしかないんだよ。あいつはおまえが家を出るのだって、ずっと反対してたじゃねえか」

「問題はあなたよ、ヴィム。私のことはどうでもいいわ」

ミレイユの言葉に、ヴィムは首を傾げる。

「神様を勝手に連れ出すわけにはいかないでしょ?」

そう言われて言葉に詰まった。
確かに、ミレイユを連れて行けば彼女の責任にさせられるかもしれない。
いや、でも、王家もオベール家も俺の性格を知っているのだから、俺がしたことだとすぐにわかるはずだ。

「ミレイユ、俺には自由がないんだよ。レイモンだって、結局は王家の臣下だ」

「王家の臣下で何か都合が悪いことがあるの?」

「……俺は他人の言いなりにはなりたくない」

神殿に連れ戻されようとしてる、ということは伏せて、ヴィムはミレイユの肩に頭をのせた。

「一緒にいたいんだ、ミレイユ。おまえと二人だけでいたい。……一緒に来てくれ」

縋るようにミレイユの手を握る。
躊躇なく我儘を言って甘えられるのは、長年ペットとして過ごした成果だ。

「困った子ね」

こうすると、ミレイユが諦めて頭を撫でてくれるもわかっている。
彼女の片手が髪を滑り、ヴィムは抑えきれずに笑みを浮かべて握った手に力を込めた。


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