「とうとう神に打ち勝ったか」

悠々と足を組んで長椅子に腰掛けた王子が、部屋に入ってきたヴィムを見て笑った。

「みんな騒いでいたよ。どこぞの美男子がやってきたんだって」

「急に呼び出すからだろ。もう今は、基本的にこの姿でいるんだよ」

ヴィムは王子を睨んで向かいの席に腰掛ける。

家に使いが来たのが一時間ほど前。
仕事中のレイモンまで飛んで帰ってきて、王子の来訪を告げてヴィムを引っ張り出してきた。

「大体、用があるならおまえが来いよ。わざわざ呼び出すな」

「お祖父さまが仰っていたが、歴代の守護神の中で、君が一番風格があるらしいよ」

「嫌味かよ。態度がでかくて悪かったな」

ヴィムは舌打ちして、運ばれてきた紅茶に口をつける。
わかってるんじゃないかと爽やかに笑って、王子は楽しげに目を細めた。

同年代であり、幼馴染とあって二人は仲が良い。
ヴィムが神を宿してからは王子より格上となり、遠慮のない性格に拍車をかけている。

「一体何の用だよ。王子様がわざわざここまで来るなんて、よっぽどのことなんだろうな」

「わざわざここまで、人間に戻った君を見に来たんだよ。レイモンから連絡があったから」

「暇なのか、おまえ。ついこの間、この姿で話をしたばかりじゃねぇか」

「可愛げのない奴だなぁ。ありがとうくらい言えないの?」

ヴィムが鼻で笑うと、王子は呆れたように苦笑する。

「まぁ実のところ、陛下から見舞いを預かってきたんだ。君はいらないと言うと思って、レイモンに預けてあるよ」

「そりゃどうも」

王子の予想通り、ヴィムは興味のなさそうな顔で礼を言う。
今入ってきたばかりの扉のほうを見て落ち着かない様子を見せる彼に、王子は不思議そうに首を傾げた。

|

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -