自分の部屋だというのに、ミレイユは様子を窺うようにドアから顔を覗かせる。
そうしてベッドに伏せる獣の姿を確認して、ほっとしたように笑顔になって彼に駆け寄った。

「ヴィム」

頭を撫でられて、うとうとしていたヴィムは薄く目を開いた。
人間の姿を保つのは体力がいる。
夜になると、ぱたりと眠りに落ちるのがお決まりとなっている。

「疲れたのね」

ミレイユの手が頭から背中にかけて毛並みを梳かし、ヴィムはさらに気持ち良くなって目を閉じる。
お風呂上がりのミレイユは石鹸の匂いがする。
顔を寄せると、くすりと笑って額にキスを落としてくれた。
いつも、こうして子供のように寝かしつけてもらう。

人の姿でいるときと獣の姿でいるときと、ミレイユの態度の変化は明らかだ。
獣でいるときは、こうして今まで通り笑ってくれて、触れてくれる。
人の姿で怯えられて傷ついては、獣の姿で彼女の好意を確かめて安心する。

不毛だと思う。
だけど、本物の俺は人間だ。
人として好かれないと意味がない。

「……こっちの姿だと安心する」

たとえそんなことを言われても、だ。

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