らしくもないヴィムの様子に、ミレイユは不思議そうに顔を上げた。
ようやく目が合って、ヴィムは少し笑みを漏らす。

「どうしようもなかったんだ。ある日急に自分の体がなくなって、誰も信じられなくなって。寄ってくる人間、みんな敵みたいに思ってた。……こんなに大事な人になるなんて、思ってなかった」

わかっていたら、傷つけることなんてしなかったのに。

ヴィムはミレイユの手をぎゅっと握り、唇を噛む。
ミレイユはそれを聞いて、何とも言えない顔をしていた。
何と言っていいのかわからないのかもしれない。
言葉を探すように視線を彷徨わせ、躊躇ったように口を開いた。

「あなたに助けられたのは私のほうよ。私は、あなたがいなければ今頃ひとりだったから」

恐る恐るといったふうに、ミレイユは自分の手に重なったヴィムの手に、もう片方の手をそっとのせる。

「私こそ、会えなくなる前にお礼を言おうと思っていたの。私をここに連れてきてくれて、ありがとう。……ずっと一緒にいてくれて、ありがとう」

次に戸惑った様子を見せたのはヴィムだった。
瞳を揺らし、泣きそうに眉を寄せる。

こうして彼女はいつも俺を救ってくれるのだ。
一緒にいてくれることを許してくれる。
俺に存在意義を与えてくれる。

「俺こそありがとう、ミレイユ。俺は、おまえがいなければ生きてこれなかったよ」

重ねられた手を取って、ヴィムは傷痕に口づけた。
ミレイユは驚いた様子を見せたが、逃げ出したりはしなかった。
いつものように優しく笑い、困った子ね、と眉を下げてヴィムを受け入れてくれた。

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