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そろそろと近寄ってきたミレイユの肩に手を回し、ヴィムは自分の方へ引き寄せる。
ミレイユは体を震わせたが、抵抗できずにヴィムの腕の中に収まる。
「大丈夫だよ、何もしない」
頭を撫でて、安心させるように言う。
この時点ですでにアウトだという気もするが、ヴィムからしてみれば譲歩しているほうだ。
約束通り、人の姿でミレイユの部屋に入ることもしていない。
代わりに自分の部屋に引っ張り込んでいることがバレたら、レイモンに叱られそうだが。
「……ごめん」
ミレイユの左手を取って、手の甲を親指で撫でる。
彼女はびくりと身を強張らせたが、ヴィムの言葉に怪訝そうな顔をする。
「いっぱい怪我させて、ごめん。傷、残しちゃったな」
うっすらとミレイユの手のあちこちに残る傷痕。
出会った頃に、噛んだり引っ掻いたりしてつけてしまった傷だ。
「……こんなの、気にしなくても」
ミレイユがヴィムの視線に気づいて、謝罪の意味を悟る。
「ずっと後悔してた。謝ろうって」
「いいの。仲良くなれたから、それで」
「良くないよ。ごめん。……だけど、うれしかったんだ。それでも受け入れてくれたから」
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