「何のために部屋を用意したのかわかってるのか、おまえは」

レイモンが腰に手を当ててヴィムを見下ろしている。

「ここはミレイユの部屋だ。迷惑してる。出ていけ」

「俺の部屋でもあるよ。俺だってずっとここに居たんだから」

「でしたら、私が部屋を移っても……」

「おまえと一緒じゃなきゃ意味がない」

隣に座っているミレイユが立ち上がったので、ヴィムはその手を引いて引き留める。
ミレイユは驚いたように肩を跳ねさせ、レイモンは呆れた顔で溜息をついた。

ようやく人の形を保てるようになり、ミレイユに正体を明かして一週間。
新しく部屋を用意されたものの、なぜ移動しなければならないのかわからない。
俺が体を取り返した目的の半分は、彼女の傍にいるためだ。
やっと言葉を交わし、触れることができるようになったのに、離れていなければならない理由がわからない。

「あのなぁヴィム。中身は変わらなかろうが、おまえは人の姿でいることが多くなったんだから。ミレイユを男と同じ部屋に置いておくわけにはいかん」

ぎろりとレイモンに睨まれて、ヴィムは負けじと睨み返す。

「こんなときだけ保護者根性発揮してんじゃねぇ。おまえは黙って嫁の尻に敷かれてろ」

「だったらミレイユ、おまえが直接言えばいい。邪魔だから出てけって」

「えっ」

話を振られたミレイユが、びっくりしたように目を丸くする。
俺も隣で目を見開く。

ちょっと待て。
ミレイユにそんなことを言われたら死んでしまう。

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