レイモンを好いている子を傍に置いておくわけにはいかない。

アデリアの言葉が胸に突き刺さる。

ただ傍にいたいだけだった。
妹でも、使用人でもなんでもいい。
ただ彼の傍に置いてほしいだけだった。

その感情が純粋なものでも、ミレイユの立場では言い訳にしかならない。
ミレイユがアデリアに嫉妬を覚えるように、レイモンの妻であるアデリアは尚更、ミレイユに同様の感情を抱くだろう。
そんなことは簡単に想像できた。
だから、自分が邪魔であるということも。

「ごめんなさい」

ミレイユはひとり謝罪を落とす。

レイモンの快活な笑顔を思い出す。
ここにいろと心配してくれる優しさを。
頭を撫でてくれる大きな手を。

どうして家族として、妹としていられなかったんだろう。
彼を兄として尊敬していられなかったんだろう。
ついてまわる淡い感情が捨てられない。

ぎゅっと目を閉じると、滲んだ涙がこめかみをつたってシーツを汚す。
いつも傍にあるヴィムの温もりにも見放されたまま、ミレイユの最後の夜は更けていった。

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