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私は恋愛に疎い。
花音とのごたごたでもそうだったけど、また付き合うとなると話は別だ。
佐伯くんはあの性格だし、経験もあるしで余裕綽々だが、私はいつでも悪戦苦闘。
どうしていいかわからないことがたくさんある。
「ねえ、今度の休みどっか行こ」
大学の帰り道、一緒に歩いていた佐伯くんに誘われる。
「そうだねー」
「え、ほんとに?」
頷くと、佐伯くんが珍しくうれしそうな顔をする。
うわ、その顔反則。
思わずきゅんとする。
そんなふうに喜んでくれるなら、余計なこと気にしないで、もっと一緒にいるんだった。
「じゃあ土曜日はバイトだから、日曜日。大丈夫?」
「うん、だいじょ……あ」
「え?」
「花音と出かけるんだった……」
瞬間、さーっと空気が冷めていく。
「俺よりあの子が大事なの、潤ちゃん」
「いや、だって、先に約束しちゃったし」
「花音ちゃんとはいつも一緒に出かけてるでしょ。たまには俺と出かけてくれてもいいんじゃない」
「そんなこと言われても……」
私が困って眉を下げると、佐伯くんは深い溜息をつく。
「潤は、俺と一緒にいるの嫌なの」
低い声に確信をつかれて、どきりとする。
私が動揺したのに気づいたのか、佐伯くんが表情を揺らす。
「そんなことないよ。何言ってるの」
笑い飛ばそうとしたが、うまくいかなかった。
佐伯くんが苦い笑みを浮かべて、視線を逸らす。
謝らないと、と思う。
でも、謝るって何に?
正直に話して、佐伯くんを傷つけろと?
何も言えずにいるうちに、佐伯くんが何事もなかったように話を逸らした。
最悪だ、私。
自分が悪いのに、どうしようもなく泣きそうになった。
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