佐伯くんが他の子と一緒にいるのは嫌だ。
でも、可愛い子だったら仕方ないかなという気がする。
客観的に見ても、私は可愛いほうではないし、世の女の子のようにお洒落でもない。
私はいつまでたっても自分に自信がないのだ。
うじうじと考えすぎて、いつのまにか見捨てられている気がする。

「うれしくねーの?あんなイケメンな彼氏がいて」

「私はうれしいけど。佐伯くんがかわいそう」

「なんで」

「なんでって」

「一年片思いした女と付き合えたらうれしいんじゃねーの。その彼女にそんなこと思われてるほうがかわいそう」

がつんと頭を殴られたような衝撃だった。

確かにそうだ。
よくわからないけど、きっとそうだ。
もし私が佐伯くんに、他の男とお似合いだなんて言われたら怒ると思う。

「申し訳ありません……」

「俺じゃなくて佐伯に謝れよ」

「すみません」

「で、かわいそうって言うなら可愛くなる努力でもすればいいだろ。愚痴ってたってどうにもならねーんだし」

まったくもってそのとおり。
私は感銘を受けて好人くんを見つめる。

「好人くんって意外といい人ですね」

「意外とってなんだよ」

「いい人ですね。好きになりました」

「こらこら。彼氏がいない間に何言ってんの」

頭上で声がして、驚いて振り返る。
不敵な笑みを浮かべる佐伯くんと、びっくりした顔の花音が立っていた。

それから誤解をとくのに好人くんが焦り、佐伯くんが煽り、花音が怒り、といつもの展開になるのだった。

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