「そろそろ仲直りしてやったら。佐伯も参ってるよ」

呆れたように好人くんが言う。
参ってるってなんだよ、と反発的に思ったが、少し心配になる。

「怒ってないの?」

「佐伯?まぁお友達とのことは気に入らないみたいだけど、怒ってはないよ。言いすぎたって反省してる」

そう言って、バイク通学の彼は駐輪場のところで立ち止まり、近くの街頭に凭れ掛かった。

「意地張ってないでちゃんと話せよ。別れる気もないくせに」

「だって、信用してくれないから腹立つ」

めんどくさそうに忠告されて、私は頬を膨らませる。

「そりゃ、タイプって言ってた男と仲良くされたら焦るだろ。ただでさえあんたには花音の前科があるんだから」

「前科って」

「佐伯に大して興味なさそうに見えるんだよあんたは。いい意味でも悪い意味でもさ。だから簡単に離れていきそうに見えるし、あいつのほうが気持ちが強いんだから警戒もするだろ」

興味がなさそう、という指摘にぎくりとする。
ついこの間、本人にも言われなかっただろうか。

「花音みたいにふらふらすんな。佐伯は俺みたいに人間できてないから、耐えられないぞ」

「誰が人間できてないだよ」

ふいに後ろから声が掛かって、私は驚いて振り返った。
つかつかと近づいてきた佐伯くんの眉間には皺が寄っている。
少し息が乱れていた。
どうやら走ってきたらしい。

「彼氏も来たことだし、俺は帰るよ」

「ああ、さんきゅ」

「は、はめられた!」

携帯を持っていたのは佐伯くんに連絡したからだったのか!

話が通じているような目配せを交わした二人にはっとして、叫んだときには手遅れだった。
佐伯くんは私の腕を掴んでいて、近くのベンチに引きずられていく。

ちょっと待って、心の準備ができてない!

思わず逃げ出そうとしたが、すでに手遅れ。
好人くんが笑いながら、ひらひらと手を振って去っていた。


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