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今更だが、花音に言われてようやく気づいた。
佐伯くんの理解不能な怒りは独占欲だったのか。
「私なんか束縛してどうするんだ」
ひとりの帰路をとぼとぼと歩きながら呟く。
なんだかピンとこない。
何度も言うが、あの人は自分の顔がどんなものか理解しているのだろうか。
「馬鹿だなぁ」
あんな彼氏がいて、他の男に目が向くはずもないのに。
溜息をついたところで、ふいに後頭部をごつんと殴られた。
「ひとりでぶつぶつ言ってんじゃねぇ。気持ち悪い」
後頭部を押さえて振り返ると、そこにいたのは好人くんだった。
手には携帯を持っている。
私を殴った犯人はこれだ。
「何するんですか。通り魔ですか」
「キャンパス内で人を犯罪者扱いすんな」
理不尽に睨まれて、私は口を尖らせる。
もう喧嘩にはうんざりしている。
これ以上反論せずに、私は前へ向き直った。
「花音は?」
「今日は友達とゴハン。俺はバイトだから帰ってきたけど。あんたこそ佐伯は」
「……どうせ知ってるんでしょ」
私が睨むと、好人くんはにやりと口角を上げる。
お昼に花音のところに来ないということは、佐伯くんのところに行っているに決まってる。
「なんだかんだ、おまえらよくケンカするよな」
面白がるように好人くんに言われて、私は言い返すこともできずに押し黙った。
確かに、なんだかんだ花音と好人くんのほうが仲がいい気がする。
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