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仲良くなってやる!
と言ったところで谷くんと会えるわけでもないし、そもそも本気で言ったわけでもない。
「もうあんな男別れちゃえ」
花音に愚痴ると、彼女は頬杖をついてにこにこと笑いながら可愛らしく言った。
私はぐっとサンドイッチを喉につまらせる。
まぁ花音に話をしてどんな答えが返ってくるかなんて、聞かなくてもわかってはいた。
「べつに別れたいわけじゃないよ」
「そなの?つまんなーい」
「つまんないって」
正直な花音の態度に、私は苦笑いを浮かべる。
今日は空き教室でお昼を食べた。
学食に行くと佐伯くんと会ってしまうからだ。
あれから三日、彼とは会っていない。
電話が入っているが、無視している。
「私悪くないよね?」
「当たり前でしょ。潤ちゃんが悪いわけないじゃない」
「でも、佐伯くんが悪いかって言われたら、そうでもない気もしてきたんだよね」
「あの男が悪いに決まってる!自分の友達と話してただけで怒るとかありえない!」
花音はばん!と机を叩いた。
教室にいた他の何人かが振り返る。
この話ここにいる全員に筒抜けじゃないかと不安になりつつ、花音をなだめて大人しくさせる。
何を言っても私の味方をしてくれてありがたいが、なんだか参考にならない。
「私が謝ったほうがいいのかな」
「潤ちゃんが謝る必要なんてないよ!あっちが謝るべき!」
「そしたらこのままずるずる会わなくなりそうな気がする」
「それでいいじゃない」
ぎゅっと手を握られてきらきらした目を向けられたが、どうも期待に応えられそうにない。
そんな私の様子を見て、花音は小さく溜息をついた。
「ほんとにあの男、何度潤ちゃんにこんな顔させれば気が済むんだろ。ぶっとばしてやりたいわ」
「え?」
ぼそりと呟いた言葉が聞こえなくて、私は首を傾げる。
しかし、花音は首を横に振って、いつもどおりにっこりと笑った。
「独占欲の強い男なんて嫌ね、って言ったの。どーんと構えてられないのかしら」
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