頬杖をついてチョコレートを食べる谷くんを眺めていると、ふと視線を感じた。
顔を上げて、そこにあった顔にぎくりとする。

佐伯くんだ。
やばい。

やましいこともないのに、そう思ってしまったのが顔に出た。
谷くんが私の様子に気づき、視線をたどって背後を向く。
少し離れたところに、サークルの人たちと通りかかったらしい佐伯くんを見つけ、彼は無邪気に手を振った。

「何してんの」

つかつかと近づいてきた佐伯くんは、いつもと変わらない様子だった。
だけど、違う。
威圧感とか、まとうオーラの冷たさとか、そんなものが。

「今偶然会ってさ、お菓子もらってたんだ。おまえの彼女いい子だな」

「誰にでも餌付けされんなよ、おまえは」

「いてえ!」

鋭いチョップを下ろされて、谷くんが頭を抱える。
佐伯くんの怒りにまったく様子に気づいてない谷くんは、むしろ彼に会えてほっとした様子だ。

私は居た堪れずに視線を逸らす。
まさか席を勧めてチョコレートをあげただけで浮気判定されるとは思わないが、先週の一悶着を思い出すと、まずい気がしないでもない。

「というか、いつのまに仲良くなってんの」

「え?この前おまえが紹介してくれたじゃん」

「おまえ、こんなとこ先輩に見られたら怒られんじゃねぇの。今売店にいたぞ」

「え?いや、これぐらいで怒んないだろ。ていうか、別に彼女でもないしそんな……」

谷くんは佐伯くんの言葉にぎょっとした様子を見せ、ごにょごにょと言い訳をしながら席を立った。

彼のバイト先の先輩というのはどうやら女だったらしい。
片思い中というところだろうか。
というか、怒ってるのは佐伯くんのほうだろうと思ったが、口に出せるわけもない。

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