ちらりと視線だけ上げて佐伯くんの表情を窺う。
いつ見ても綺麗な、端正な横顔。
相変わらず何を考えているのかわからない顔だが、ほんの少し眉が寄っている。

「でもね、潤ちゃん。他の男に格好いいだなんて、彼氏の前で言うことじゃないよ」

「すみません」

「しかも俺の友達に。これから敵にしか見えなくなるよ」

「そんな大袈裟な。格好いいって言っても、佐伯くん以上なわけないじゃない」

この人は自分の顔がどんなに整っているのか理解しているのだろうか。

私が首を傾げると、佐伯くんがちょっと目を丸くしてこちらを見た。

「え、俺って格好いい?」

「え?うん。そりゃそうでしょ。こんな格好いい人、出会ったことない」

「ほんと?」

珍しく佐伯くんの表情が明るくなる。

今さら何言ってるんだこの人。
王子なんて呼ばれて、散々モテているくせに。

「君がそう思ってくれてるとは知らなかった。最初から俺に興味なさそうだったから」

「いや、そんなことないよ。というか、格好良すぎて圏外だったくらいだよ」

「それは喜んでいいのか悪いのか」

佐伯くんがは首を捻ったが、少し笑みを見せる。

「でも、よかった。安心した。谷に取られるかと思った」

「友達や恋人を疑うもんじゃないですよ」

「そうだね、ごめん」

あっさり謝って、佐伯くんは私の手を取る。
機嫌が直ったらしい。
私はほっとして彼の手を握り返した。
たまに見せる子供が拗ねるような表情が好きだ、ということは心の中にしまっておく。

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