END


「今日は別の作ろうか?」

「ううん、お粥がいい」

即答した俺に苦笑しながらも、潤は慣れた手つきで用意を始める。

実は潤のお粥は三日目だった。
うちは両親共働きなので、大学帰りに彼女が看病に来てくれていたのだ。
そして、約束通り作ってくれたお粥が予想以上に美味しくて、今日で三日目。
まだ食欲もないし、胃にやさしくてちょうどいい。

「美味しい。毎日これでいい」

二人で卵粥を食べながら、三日も一緒に過ごしてもらって、たまには風邪もひいてみるもんだなと思う。

「だめだよ、夕食はちゃんと食べないと。肉とか野菜とか食べなきゃ治らないよ」

「うん、あとは喉だけだから平気。潤ちゃんは体調崩したりしてない?」

「なんともないよ、大丈夫」

「今度お礼するね。早く治すからどこか行こう」

「じゃあ佐伯くんのお弁当持って出かけようよ」

潤が悪戯っぽく笑って、俺は無理無理と本気で手を振ってみせる。
でも、彼女が俺のために料理の練習をしてくれたように、俺も彼女のためならそれくらいしたっていい。
まぁ、絵的に気持ち悪いから実際にはしないけど。

「あ、降ってきたよ。家ついてからで良かったね」

ふいに手を止めた潤が、窓のほうを指差してそう言った。
硝子の向こうで、雪が町を染めてゆく。
その冷たい世界を見て、自分の居場所の温かさにほっとした。
テーブルに置かれた潤の手に自分の手を重ねると、彼女は頬を染めて柔らかくその手を握り返してくれた。

END


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