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罰が当たったのか、本当に風邪をひいてしまった。
三日休んでマスク姿で出てきた俺を見て、花音があからさまにざまあみろという顔をする。
「潤ちゃんに近づかないでくれる?風邪うつっちゃう」
喜々として花音が潤を俺から遠ざけ、反論もできない俺は八つ当たりに好人を叩く。
「おまえの女どうにかしろ」
「しゃべるなよ、喉死んでる」
呆れた顔で好人が俺を見て、鞄からのど飴を取り出してくれる。
なんだかんだ、こいつが一番常識人で、潤の言うとおりいい奴かもしれない。
「もう授業終わりだろ?浅倉、さっさと連れて帰れよ」
「うん。佐伯くん、帰ろ」
「えぇえ、一人で帰しなよ潤ちゃん」
「潤ちゃんは俺にお粥を作ってくれる約束なんですー」
「花音も好人くんも早く帰ったほうがいいよ。今日も雪になるらしいから」
いつものやりとりが始まろうとするのを遮り、潤が俺を押しながら二人に手を振る。
少しの間だったが、遠ざかっていた日常が戻ってきてほっとする。
これが日常だと思うのも癪だが。
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