12
「こういうことがあったとき、ちゃんと報告したほうが安心する?」
尋ねると、潤は少し考えて、首を横に振った。
「佐伯くんは何でもないから言わないんでしょ。だったら言わなくていいよ」
本当にできた子だ。
そこまで信頼されていると、俺もきちんと答えたいと思う。
「でも、不安になったときはちゃんと言ってほしい。一人で悩まれるのは嫌だ」
「そうだね。逆に佐伯くんも悩ませちゃうしね」
「特にあの女から聞かされるのだけは我慢ならない」
「口止めしたんだけどなぁ」
俺が憮然とした顔をすると、潤は困ったように笑う。
その調子では、彼女も話したくて話したんじゃなかったのだろうなと思う。
たぶん、花音が俺より強く問い詰めたのだろう。
それも腹が立つ話だ。
「でもね、おかげで好人くんがわざわざ話にきてくれたんだよ。佐伯くんは無実だって」
「は?好人?」
「ちゃんと断ってるから余計な心配すんなって。あの人、やっぱいい人だよね」
あの野郎、俺にはバラしてやるとか言っておいて。
知らないところで格好つけんじゃねえよ。
思わず笑みを零しそうになって俺はわざとらしく咳払いをする。
「まぁ、今回は感謝してるよ、あの二人にも」
「そうだね、いい友達を持ったね」
「でも、一番は潤に感謝してるよ。俺を信じてくれてありがとう」
そう言うと、潤はぱちりと目を瞬かせる。
それから、うれしそうに目を細めてはにかんだ。
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